明確な意志

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「マッキーTV / メントスコーラしたらまさかの事故⁈」レビュー

マチュアメントスコーラ動画をレビューするTwitterアカウントを作ったが、ブログでやっていく方がまとめやすかった のでそうする

 

 

今回はメントスコーラ界のナンバーガールとも名高い「マッキーTV」を取り上げる。

マッキーTVは「マッキー」「アシュリー」「kくん」「GKT」の4人のメンバーが主体となるグループで、撮影を年長者の「マーくん」が担当し、マネジメントをおこなっている。

本動画はそのマッキーTVにおけるメントスコーラの様子を収録した動画で、約3分半の長さながらもメントスコーラ・ディガーにとって大きな衝撃を残し、たびたび議論にも挙げられる傑作とも言えるだろう。

日本におけるメントスコーラ史を体系的に捉える試みの場合、マッキーTV以前 / マッキーTV以後というような分類がされていることは、聡明な読者諸君にとってはもはや基礎知識の一部となっているはずだ。

そんなマッキーTVのメントスコーラ動画「メントスコーラしたらまさかの事故⁈」がなぜナンバーガールにも例えられており名作を呼ばれているのか、簡単ではあるが紹介をしたい。

 

 

1. ビジュアル

まず動画を再生して目を惹かれるのは、雪がすこしだけ溶け残った公園に佇む4人のメンバーであろう。その中でもリーダー格のマッキーは赤色の衣服を着用しており、他の3人と比較してもかなり目立つ印象を受ける。さらに、企画進行においてもリーダーシップ的な振る舞いを見せることが多く、これはナンバーガールにおける向井秀徳のような精神性を表明しているのではないか、と感じざるを得ない。

また、動画全体からも感じられる灰色で殺伐とした雰囲気も、有象無象のメントスコーラ動画からは感じられない独特な雰囲気を醸し出していることがわかるだろう。これはさながら、さらなる暴力的な音像を求めてタルボックスロードスタジオまで足を運んだナンバーガールと通じるところがないだろうか。マッキーTVにおけるマーくんは、いわばデイヴフリッドマンと同じ役割を提供しているのだ。彼のセンスが光る画面構成は、マッキーTVをマッキーTVたらしめる唯一無二の要素と言っても過言ではないだろう。

 

 

2. 特異性

マッキーTVのメントスコーラ動画にはいわゆる「裏切り」が数多く存在する。

 

 

動画時間0:57で、アシュリーが唐突にコーラのレビューを行う姿を確認することができる。

マチュアメントスコーラ動画において、コーラを飲むことはあってもレビューに行き着くまでの精神性はなかなか発揮されている場面が少ない。反面、マッキーTVではこのアティチュードが遺憾無く発揮されていることがわかるだろう。ナンバーガールにおいても、歌詞世界においてこのような「裏切り」の表現を取り入れていることがある。

 

寒い日にコートを着る人は多い

(日常に生きる少女)

 

当たり前とされた前提をあえてもう一度言葉にすることで、地盤を固めた新しい表現を提供していく。マッキーTVの本質が現れた一幕と言えるだろう。

 

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さらにこの場面に注目したい。ここでは、アシュリーに何か異変が起きたことを示唆するテロップが表示されている。しかしこの数秒後が「裏切り」を明確に表している。

 

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そう、なにも起きないのである。

あれだけ前フリを提示しておきながらも、何もおこさない。何かのモノマネではなく、常にオルタナティブであり続ける。

ZAZEN BOYSでも感じられるプログレッシブ性を、マッキーTVはなんと早期から確立していたのであった。

 

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しかし動画後半、ここでアシュリーは再びゲロってしまう。

そう、これは田淵ひさ子によって奏でられる鋭いギターフレーズが、曲の後半でさらに鋭角になっていくナンバーガールの曲構成に類似しているのだ。

 


 

3. 言葉選び

マッキーTVには、初期ナンバーガールの歌詞世界を思い起こさせるような、センチメンタリズムに富んだ表現も数多く存在する。ここではその一部を取り上げる。

 

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「この時が1番楽しかったな」

動画編集を経て過去の回想をおこなう、時間軸のズレとギャップをうまく組み合わせたテロップ。青春の一ページを破り取って紙飛行機にしたような、王道ではないスレたセンチメンタルは初期ナンバーガールのこの曲でも感じられることができる。

 

さあもう目を開けて

感傷のうずまきに沈んでゆく俺を

まぼろしに とりつかれた俺を

突き飛ばせ そしてどこかに 捨てちまえ

(omoide in my head)

 

名曲に通じるような既に確立した、マッキーTVのこの表現にはもはや脱帽せざるを得ない。

 

 

まとめ

以上が本動画の紹介および、ナンバーガールとマッキーTVの類似性を例示しその呼び名の理由を解説したまとめである。このレビューがアマチュアメントスコーラ研究の一助となれば、この上ない喜びである。

マッキーTVは初学者にとってはとっつきにくさも感じられるとは思うが、一度体系的に学んでいただきたい表現者であると感じる。是非覚えていただきたい。